歴史の忘れかた(1)
米中金融貿易戦争について、習近平はアメリカ国債を売れないからすでに詰んでいるというやりとりがあった。桜チャンネルで渡辺氏が、アメリカには「国際非常時経済権限法」(IEEPA) がある。国債が大量に売却されそうになると他国保有の国債をチャラにできると解説された。前田氏が、「いつそんな便利な法律を作ったんですか?」と呆れた。「カーター大統領の時です」と渡辺氏。
あの頃かなと気になったのでネットで調べてみた。1977年の12月にカーター大統領の署名をもって法案成立となっている。就任一年以内の制定だった。 そのころのアメリカ国債の最大の所有者はダントツで日本だった。国債が紙くずになる、そのターゲットは日本だったのだ。
1973年に第一次オイルショックがあった。OPECが突然原油価格を4倍に値上げした。ニクソン大統領の時である。馬渕元大使の見方に洗脳されてしまったせいか、オイルショックが国際金融機関がニクソン追い落としのために仕掛けた事件だったとしても驚かない。自動車大国のアメリカでガソリンが無くなった。大統領辞任は翌年だった。
原油を全て輸入に頼っている日本は大騒ぎになり、史上初めて貿易収支が2年連続で赤字になった。新聞雑誌には日本はもうダメだとする論調が溢れた。政府も大変だっただろうが、未曾有の国難に誰もが右往左往した。
IEEPA法は苦境の日本にさらに追い打ちをかける仕掛けになった。いざという時でもアメリカ国債を換金できない。買えるが売れない商取引は公平ではない。国益に資するのが大統領の仕事ではあろうけれど、相手は同盟国なのに。
カーター政権の安全保障担当補佐官はブレジンスキーだった。たぶん彼が法案のアイデアを進言したのだろう。日本潰しだけ考えれば当たるというブレジンスキーの見通しは、しかしながら外れた。「ひよわな花、日本」という本を書いたが、二流の知識人といわれた。ユダヤ人だが深みと凄みにかける。
日本は石油危機を省エネで乗り切り、ホンダが新しいエンジンを発明したことでアメリカ自動車産業まで圧倒してしまった。
この法律の存立基盤は軍事力である。アメリカ経済は軍事力に支えられている、恫喝経済だ。公平な取引だけの実力はわからない。いつも危機だー、危機だーと叫ぶ経済学者がいる。
今は米中対立で高みの見物を決め込んでいられる。これも勤勉な国民の努力の賜物だろう。IEEPA法がもとは日本相手の法律だったことは忘れられている。
nature