糖病記(7)
火曜日に歯医者に会った。さっそくこの夏はどうだったかとお互いに確かめ合った。
「チェーンソーで足を切ってしまった。六月三日の夕方で、単なる不注意だった。骨がわずか切れた。手術になって二泊した。三週間は松葉杖生活だった。十週目でほぼ治ったけどね。」
「それは痛いだろう。」
「痛かったけどほとんど治ってきた。」
「でも今も痛いだろ。」
「そうなんだ。痛みはなくなるのか、いつまでも続くのかわからないので困っている。」
「骨そのものは痛みを感じない。骨を包む組織が壊れると痛い。鶏の骨を食べるとき骨にくっついている肉を食べるだろ。肉の部分が損傷すると激しく痛い。その組織はタンパク質でできていて修復が遅い。」
患者の苦痛と毎日格闘する歯科医だけの事はある。痛みが感じられる部位や仕組みをよく知っている。骨を包むタンパク質組織については習ったことがあったがコロリと忘れていた。痛の大本だとは思わなかった。
皮膚組織は回復したはずなのになぜチクチク痛むのだろうかと疑問だった。リンパ液や腫れは不快ではあるが、本命ではなかった。骨とそれを包む皮膜が元どおりに戻るまでは痛みが続く。「骨を断つ」が命懸けの行為であり命に関わる言葉であることを知った。