糖病記(15)糖化と老化

糖病記(15)糖化と老化

2023年七月十一日 の朝、用事があって銀行へ行った。表ドアを開けて内側のドアまで狭い通路の右側を歩く。左側を車輪がついている旅行用鞄がすれ違った。ゴロゴロと動いているのに人の姿が見えなかった。えっと振り返った。今入ってきたドアを中年の男が鞄を引いて出ていくのがぼんやり見えた。

すれ違った際なぜ人の姿が見えなかったのか、しばらく右目、左目と手を当てて視野をテストした。右目の曇りが拡大したようだった。よく見えた方の右目の白内障が急に進行したらしい。失明の恐怖に襲われた。

症状の悪化には二つの要因が考えられた。二ヶ月ほど長い飛行機旅と長距離ドライブが続いた。疲労が溜まった。疲れが溜まると普段でも視力がガタンと落ちる。治療法は休養することだ。

もう一つは化学的な変化だ。白内障は透明だった水晶体が曇ってものが見えにくくなる。曇りは不可逆で、今のところ透明に戻す方法はない。歳とると視力の低下を訴える人は多いが、ほとんどはありふれた白内障だという。いよいよ真性老人になった。

救いは人工レンズに置き換える手術が発達したことだ。視力を取り戻したと喜ぶ人に会うのは珍しくない。

白内障について何本か動画が挙がっていた。熱中症に罹るような暑熱の下では、卵が茹るような感じで血中のタンパク質が変成しやすい。そして糖分と結合して血榴になるという。糖化という。その血瘤が目の毛細血管に入って水晶体を曇らせる。暑熱は糖化を進める。特に老人は暑さを避けるようにという内容だった。

夏は暑い。暑さ凌ぎの方法として、お日様の下で汗だくになって働き、川やシャワーで水をあびる快感が好きだった。前日は蒸し暑い中、四時間ほど芝刈り機を押し回った。説明の通り、暑熱の下で軽い熱中症にかかったのだろう。旅が多かったせいでタンパク質を過剰摂取したことも考えられる。疲れをとるために蜂蜜も多く摂った。 

糖尿病と名づけるだけあって過剰糖分の危険性は知れ渡っている。一方で過剰タンパク質の問題は意図的に語られないようだ。アメリカは肉食文化の国だから、無意識のうちに研究が疎かにされているのかもしれない。

老人になると白内障が多いとされるが、若い頃から目は濁り始めていたはずだ。濁りが積み重なり、老人になって症状が顕著になるだけだ。過剰タンパク質の害は目に現れていた。

牛肉はステーキだが、魚だってぶつ切りにした形状のものはステーキと呼ばれる。栄養も必要だと思って鮭のステーキを買うことが多かったが、魚肉もタンパク質には変わりない。金箔を貼るには卵のタンパク質を使うという。タンパク質は強靭で、糖分に比べ分解消化が難しい。身体の中でも同じことが起きる。寿司屋では新鮮な切り身を少量出されるが、過剰タンパク質に陥らない配慮であろう。先人は時間をかけて適切なたんぱく質量を見出した。

鱈は Cod という。 Cape Cod はタラ岬で、ボストンを取り囲む半島の先端だ。その辺りは鱈がいっぱい採れた。魚へんに雪とある通り白身の魚である。天火で焼くと味は淡白で白身はボロボロに崩れる。ステーキ分買って焼いた翌朝、目の異常を感じた。怖くなって、以来白身の魚は避けた。

思い返せば、鱈の白身はボロボロになるからタンパク質の分解が早い。あの朝は、目の奥で過剰糖化された血が流れていたわけだ。一方、赤身の鮭は身が引き締まっているから消化が遅いのだがタンパク質の総量は変わらない。

肉を食べるときは三倍の量の野菜を一緒に食することという注意書きを読んだことがあった。量の三倍だろうか重量の三倍だろうかと感じただけで通り過ぎたが、大事なポイントだった。

白内障関連で掌のマッサージ推奨の動画もあった。目の曇りは治せないが、血の巡りを良くすれば予防できることもあるという。ここでも救いは血の循環を通して毒を抜き栄養を届けることだった。互いの手と指を外縁から揉むだけの簡単な指圧を寝る前に二分ずつするだけ。やってみたら翌朝、気のせいか視界がはっきり見えた。掌と目は繋がっていた。

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